溝口健二監督作品「残菊物語」

むかし、こんなことを書きました・・・・・。

つい先日、溝口健二が監督した映画「残菊物語」を見ました。1939年作146分のビデオ映画です。
今度の亜矢姫の新譜は村松梢風原作「残菊物語」を題材に“お徳”になるということで、これは、是非にと
思いレンタル屋さんで借り出して鑑賞した訳です。
原作はわずか35ページの短編らしいのですが、今となっては文庫本等ではなかなか手に入れるのは難しい
と思い、手っ取り早く映画にしたのでしたが、これまた今時流行らないビデオテープでした。

溝口健二さんについては、評論家によると黒澤明、小津安二郎とならぶ邦画三巨匠のひとりとして、溝口の
名は今も世界で知られていると言います。昨年NHKのBS2で「没後50年 溝口健二監督特集」として
代表作11作品が放映されましたので、きっとご覧になられた方も多かったと思います。その内、最後に放
送されたのがこの「残菊物語」でした。私は残念ながら「雨月物語」「近松物語」「山椒大夫」以外は見な
かったので、こんな形で亜矢姫の歌が出ると知っていたら、見逃す筈は無かったのにな~と思いつつ、やっ
と鑑賞したのでした。

明治期の歌舞伎界を舞台にした芸道物語、5代目尾上菊五郎の養子であるというだけで周りからちやほやさ
れていた菊之助は、噂ばなしとして自分の芸の拙さを指摘してくれた乳母のお徳(6代目菊五郎の乳母)の
言葉に自身の芸の未熟さを悟ります。以来、嘘をつかず誠の言葉で伝えてくれたお徳に愛情を感じはじめ、
何かと親しくし始めるのですが、それを知った養母はお徳に暇を出してしまいます。

菊之助は芸を磨こうと半ば勘当同然になって家を飛び出し、大阪の上方歌舞伎の知人を頼ります。この後を
お徳は追いかけて一緒に暮らし始めるのですが、許されぬ仲の二人です。頼っていた上方歌舞伎の家元が突
然亡くなってしまい、二人は旅芸人の一座に入って生活を支えます。が、当然生活は荒みます。
将来、夫の栄光は必ず来ると信じるお徳は必死に耐え忍びますが、この頃から次第に体を病んでいきます。

献身的にありったけの力をふりしぼって、夫のために奔走するお徳、やがて菊之助は名古屋の舞台で絶大な
評価を得て、大阪道頓堀で凱旋興業のため晴れの“船乗り込み”を行うのですが・・その頃・・お徳は・・
晴れの“船乗り込み”と死の床で遠くお囃子の音を聴くお徳、やっと許された仲なのに、この対比が暗い画
面に映し出されていやが上にも、哀れさが募ります。

映像はいかにも古臭く、音声も解りにくいところがありますが、セットなどは手抜き無しの重厚さを感じま
すし、古き明治時代にタイムスリップできる良さがあります。フェードアウトする場面が多く、今時の映画
のような、たたみかけるようなスピード感はありませんが、それなりに話の筋書きはよく解ります。
当時のキネマ旬報邦画ベストテン第2位。まだの方、どうぞ映画をご覧になって下さい。

“お徳”の名は歌舞伎と人形浄瑠璃で演じられる「傾城反魂香(けいせいはんごんこう)・土佐将監閑居の
段」の中の役どころ浮世又平の女房としても見えるそうですが、こちらも夫を盛り立てる献身的な女性とな
っているようです。村松さん、きっとこんなところからも“お徳”の名前のヒントを得ているかも知れませ
んね。

さて、亜矢姫の「お徳」は如何に、
一つの題材を基に、舞台あり、映画あり、歌舞伎あり、人形浄瑠璃あり、それぞれその芸術の特性を競いな
がら一般大衆に感動という喜びを与えてくれます。亜矢姫がライフワークとする名作歌謡劇場シリーズはそ
れぞれが僅か6~7分の歌世界ですが、その芸術性においては何の遜色も無いのではないかと思うのです。
その積み上げられた一曲、一曲がとても素晴らしいと感じるのです。今度の「お徳」がどんな楽曲になって
いるのか、期待が高まります。

数日前のある日刊紙のコラムに作曲家三木たかしさんの話が掲載されていました。すこし引用します。
三木さんは昨年、下咽頭がんを患いました。経過は良く声帯も半分残った。「拾った命」と語る三木さんは
「この病気になってやっと音楽のために戦う覚悟ができた」という。
“失われた十年”は歌の世界にもあった。歌い継がれるヒット曲が出ない「我々の反省も込め音楽業界は志
低くどこかで歌をなめきっていた。もっと熱い思いがないと何の価値もない」
三木さんの悲壮感が、名コンビ荒木とよひささんの歌詞と出合って「さくらの花よ 泣きなさい」という曲
が生まれた。・・・との記事がありました。三木さんはこのように心情を吐露されています。
外からは量れないところもありますが、読み手は素直に受け取るべきでしょう。

思うに、このごろの歌はほとんどがカラオケファン志向で、どんな歌を聴いても似たような曲ばかりで、代
わり映えがしない。きっと、どこかのフレーズを切り離してきて、あちこちくっ付けただけと感じる曲が多
いと感じるのは私だけでは無い筈。こんな中では大ヒットなど生まれる訳がないと思うし、まぐれ当たりを
狙うだけのことでしょう。
この頃は若手のシンガーソングライターの作品がバカ売れする時代となってしまって、プロの作詞作曲の先
生方の影が薄い。こんなところに今の歌謡界の衰退があるのではないかと思われますが、こんな中で、三木
さんの言葉が一石を投じることになれば幸いと思います。

一方亜矢姫の歌、特に名作歌謡劇場などは歌謡文化を芸術たらしめる崇高な志操があると思うのです。聞き
手に媚びない姿勢で押し出していくところが素晴しいと感じます。プロデュサーの方を中心に製作に携って
おられる先生方及びこれを歌唱する亜矢姫さんに拍手喝采を送りたい。演歌・歌謡曲の神髄がここにありま
す。
マスコミがどうであれ、NHKがどうであれ、一般視聴大衆は良いものは良いと厳しく峻別しています。
亜矢姫のコンサートの盛況を見れば一目瞭然ですね。あの歌声、あの上手さ、あの明るさ、あの真摯な態度
、こんな亜矢姫にファンは心酔し、どこまでもついていくのです。もし、まだ知らない人がいたらこの素晴
しさを教えてあげたい・・・
今、テイチクさんでは“亜矢祭”を企画中といいます。いつごろ、どんな企画があるのか、とても楽しみで
す。

以上、2007/3/25 演歌桜・亜矢桜に投稿

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    亜矢姫の唄は芸術だと固く信じているおじんです。
    コンサートなどに参加したい気持ちはやまやまなれど、不如意のことが多いので、これは条件が整い次第となっています。

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