図書「音楽力」

今年の夏は例年にない酷暑の連続で、体の置き場のないくらい辛い日々を過ごしましたが避暑にに出
かけるにも貧乏経済では如何ともし難いし、まして家に居るには電気代がかさむ、快適な場所はと考
えれば思いつくのは公共の図書館です。
そんな訳でかなりの回数出かけたのでしたが、ここは全くもって快適な環境です。しばらく居れば自
然に瞼がふさがってしまう程の心地よさを享受できるのですが、しかし、あまり度がすぎたり、いび
きが聞こえたりすると館員さんに注意をうけてしまうので、ある程度真面目に本を広げている振りを
して過ごす。これが私流の避暑のベストの方法でした。そんな状態のなかでページを繰った本の一冊
が、日野原重明・湯川れい子著の「音楽力」。

日野原先生は現在99歳で多方面に活躍される医学博士で肩書きや役職は数えきれない程、一方湯川
れい子さんは音楽評論家で作詞家、翻訳家、著作は多数で現在は(社)日本作詩家協会の会長さん。
このお二人が音楽の効用についてこの本のなかで興味深いことを書かれていましたので、少し覚書し
ておきたいと思います。
日野原先生は十歳のとき、腎臓炎になったのをきっかけにピアノを習い始めたのが音楽との係わりは
じめとのことで、大学時代に結核で一年間休んだのをきっかけにまた音楽に復帰。京都大学医学部の
大学院時代には三十五人くらいの混声合唱団のコーラスを指揮された程の実績をお持ちで、音楽に造
詣が深くていらっしゃる。

先生は音楽療法についての日本での権威で、「音楽療法」をライフワークの一つにされています。
先生はこんなことを書かれています。

音楽療法をしていると、奇跡のような出来事に遭遇することがあります。呼吸法に体を合わせていく
と、音楽と波長が合ってきます。そして、少しリズムが出てくると本当に躍動的になっていきます。
脳卒中になってから二年間失語症になってしまった患者さんの事例にも驚かされました。音楽療法の
テストだから、難しいと思うけど患者さんを貸してくださいと言いました。主治医の方は「日野原先
生、二年間言葉が出ないんですよ、今さら」と言いましたが「でもまあ」と言って音楽療法をしたの
です。どうやらその患者さんはカラオケが好きだったようで、奥さんに好きな曲を尋ねて、その音楽
をかけたのです。しばらくすると、曲に乗って「アー」と声が出てきました。さらにもうしばらくし
たら、歌に言葉が乗ってきたのです。私もビックリしました。
「あー」歌は歌えるね、と言ってあげてから部屋に帰ったのですが、なんと部屋に入ってきた看護士
さんに、「ありがとう」「おはよう」と言うではありませんか!言葉が二年ぶりに出たわけです。私
は、これは奇跡かと思いました。


理論の中では心の状態や変化に伴って選ぶ音楽も変化していく「同質の原理」という言葉がるといい
ます。「同質の原理」は肉体的、生理的、社会的な条件によって、また世代の違いとして表れることが
あり、年代によって好きな音楽に違いが出るのです。これは、アートシュラーという人が理論的に提
唱したといわれている「同質の原理」なのですが、古くは十六世紀ごろに、ヨーロッパのお医者さん
が発見していて、たとえば、うつ病の人がいたとして、私たちはうつ病の人に元気になってもらいた
いと思って、陽気な楽しい音楽を聴かせようとしがちです。ところが、これは全くの逆効果で、元気
な音楽を無理やり聞かされた人は、さらに落ち込んでしまい自殺してしまうことさえあります。


つまり、効果的な方法は「同質の原理」に基づいて、うつ病の人の心の状態に一致するような、それ
と同質の音楽を聴かせることなんですね。音楽など聴く気にもなれないと訴えるうつ病患者に、どん
なものなら聴けるのかをカウンセリングしながら、いろいろな音楽を提示します。すると、本当に陰
々滅々とした音楽を選んだりしますが、しかし、それを聴いて、ぼろぼろ泣いたり、もがいて苦しん
だりしたのちに、ふっと、少しだけ元気になれるのです。
本当に共鳴できる音楽を聴くことで、すこし、元気になる。なぜかというと、そうした音楽の中には
情緒的に働きかける部分があると同時に「リズム」「音楽としてのリズム」があるからです。どんなに陰
鬱な音楽でも、そこにはリズムがありますから、それが心臓や脳に働きかけて、ホメオスタシス(定
常性)を活性化するわけです。それが「少しだけ元気になる素」になるというわけです。


と、こんなことが書かれていますが、成る程、音楽には多様なものが溢れていて人は年齢やその時の
精神状態や本来的な好みで音楽を選ぶ、そんなことに納得させられます。
先生はさらに書かれています。
アメリカの音楽教師であるガストンの言葉「もし、言葉を使うことだけで、人と人との心がコミニュ
ケートできるならば、音楽などはなかったし、音楽が生まれる必要もなかったでしょう」ガストンは
ミュージック・セラピーの公用を最初に提唱した人です。ガストンの言ったこの素晴らしい言葉に私
は大いに触発されました。音楽は私の人生にとっても大きな役割を果たしてくれるものと改めて認識
する事ができたからです。
人生の節目節目で、言葉にならない人間の心の通い合いが音楽で与えられてきたように思います。人
間は、言葉にならない心の動きが音楽によって流れる、という特権を持っているということではない
でしょうか。


湯川れい子さんはこんなことを書かれていました。
心理セラピストに言わせますと、子供に言ってはいけない三大禁句というのがあって、それは、「が
んばれ」「だめ」「早く」という言葉なんだそうですね。
日野原先生もおっしゃっていますけれど、本当に落ち込んでいる人に、「元気出しなさいよ。がんば
って」は禁句なんですね。とにかくいっしょに話を聞いてあげて、「大変だったね」と共感する事が
大事だということです。
私は、ほかの動物にはできなくて人間にだけできることは、「想像力をもつこと」「歌を歌うこと」
「微笑むこと」の三つではないかと思うのです。これらは人間社会を形作る感性の基にになるもので
す。そういう意味で、生まれてすぐからのコミニュケーションは、この三つの能力を磨くための必須
条件です。


音楽は、癒しとか療法とかいう以前に、人間として人と共生するための手段として位置づけられるべ
きものではないかと考えています。
モーツァルトを聴かせると、牛がお乳をたくさん出すようになるのも、お乳のなかに含まれているた
んぱく質の配列が一致すからなのだそうです。酒造所でモーツァルトを流すと、いいお酒ができると
聞いたこともあります。なぜモーツァルトなのでしょうか。
日野原先生も、モーツァルトの音楽は、人間の声の音域で書かれていると語っておられますが、特に
、高音の部分は、赤ちゃんがおなかの中で聞いているお母さんの声や、血流の周波数に近いという説
もあります。四百ヘルツ前後の女性の声に、人間も植物ももっとも心地よい反応を示すということは
すでに実験でも証明されています。


島津亜矢さんの今年のリサイタルでは、小椋佳さんから提供を受けた新曲が披露されましたが、この
歌詞のなかにも音楽礼賛のような意味合いのことが歌われていたと思います。
先の、日野原先生や湯川さんの言葉にもありますが、人が生きていくには音楽は必要不可欠のもので
癒しや、安息、高揚感、或いは精神の安定を得るための最良のメディアであると感じますし、人と人
とが共生感を深める媒体でもあるのでしょう、そんなことをこの本から学びました。。

それにしても、亜矢さんが素晴らしいですね~。書かずにいられない。

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    亜矢姫の唄は芸術だと固く信じているおじんです。
    コンサートなどに参加したい気持ちはやまやまなれど、不如意のことが多いので、これは条件が整い次第となっています。

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