子供達からの手紙

身辺の雑話です

福井県勝山市の郊外に(福井県恐竜博物館の近く)雁が原という小さなスキー場があります。ここは古い歴
史を持つスキー場で、地元の者にとっては馴染みが深く、特に土日などは近郊からやっくる親子連れや若者
を集めてかなり賑わいます。
毎年1月になると、ここへ近隣市町の小学校から体育授業の一環として学童たちがスキー学習にやってきま
す。主に対象となるのは高学年ですが、子供達それぞれのスキー技術はまちまちなので学校側において班分
けをしてきます。通常は十二~三班になることが多く、このうち、スキースクールに講師派遣を依頼してく
るのは7~8人。講師と言っても誰も職業としている訳ではないので、若い方は仕事との調整もあってなか
なか大変です。私のような隠居の身は気が楽で良いのですが、それでも連日では体力が持ちませんから、そ
う再々は出られません。

このようにスキー学習を手助けするのですが、担当してみて見えてくる事や解ることもあります。
たとえ小学校と言えども校風というものが感じられて、キビキビとしていて規律のある学校、なんとなくダ
ラダラしていて行儀のあまり良くない学校、など、それぞれあります。、
また、引率の先生もしかり、担当を決めて講習中はつかず離れずに気を配る学校、現場に全く姿を見せない
学校、これもまたそれぞれあって面白い。教育方針の細かいところは、学校それぞれに多少の違いがあるの
でしょうか、これが校風として感じられるのかも知れません。

とにかく、スクール側のメンバーが受け持つのはスキーが初めてというビギナークラスから順に上のクラス
へと進みますから、場合によっては、かなりの労苦を強いられる事もあります。降雪時などは靴底に雪の塊
が着いてしまいスキーが履けませんから叩き落としてあげねばならず、これも全員となるとなかなかです。
さて、一応スキーが履けても今度は滑走面に雪塊がついてしまって滑らないこともある。そうなると最初か
らやり直しで、ワックスのこすり付けをしてあげてからスキーを履かせる作業を根気よく続けます。講師た
ちは慣れでこなしますから、これはそんなに苦にならないのです。ただ、こんな日にやってきた子供達が可
哀そうに思えるのですが、大概めげる子供は殆どいないのがせめてもの救いになります。

さて、いまからの話はあまりお行儀の良くない方の学校のことです。
この日、私が担当したのは5年生の男女合わせて6名のビギナー班でした。
通常は基本になることを教え、午前2時間程でリフトに1~2回乗せることが出来ればベストとなるのです
が、これも子供達に個人差があるとなかなか思うように運べないことがあります。

この日の子供たちは、まあ、人の言う事はあまり聞かず、真面目に練習もしたがらない、少し怒り口調でい
うと反抗的態度を見せて無視するという調子で、朝の整列時に感じたダラダラ感そのままだと内心思ったの
ですが、それはそれ、やるべきことはやらねばなりません。とにかく精一杯やるほかはないのです。それで
も、午前中にリフトに乗せるなどはとても出来ることではありません。

午後になっても、こちらが思うようにはなかなか上達してくれません。雪の上で思うにまかせないスキーを
履いて緩い坂を登ったり降りたりする訳ですから疲れるばかりで面白い筈がありません。
そこで、帰るまでに何とか一人づつでもいいからリフトに乗せてやりたいと思い、最初に連れて上がる子を
お互いで決めさせたのです。そこで、最初に名乗りを挙げたのが、ちょっとツッパリ感のある、悪く言えば
番長風な感じの一番背の高い女の子でした。

頂上からは約1キロ程ある緩いコースを降りるのですが、最初は私がアシストしながら滑り出しました。
それから、しばらく滑ったところで勘所がつかめたらしく、自発的に一人で滑ると言い出したのでフリーに
して滑らせることにしたのです。始めは恐る恐るでしたが次第に目を見張るような頑張りを見せて、途中2
、3度の転びはありましたが見事に下まで滑りきったのです。
人の助けを借りずにやりたいという強い気持ちと、やりきった後の満ち足りた顔と、あの個性がとても印象
深く心に残ったのでした。
続いての一人は男の子でしたが以外に時間が掛かってしまい、結果的に他の子供達まではやりきらず、無念
の思いを残すことになってしまいました。

このようにして、当日の指導は終わったのでしたが、後日この子供達からの礼状がスクールの担当講師宛に
一括して届けられました。もちろん学校の指導指示によるものでしょうが、こうしたお手紙が届かない学校
もありますから、見た感じで全てを決めつけるのも勝手が過ぎて良くない、というのが私の反省。

さて、このお手紙の中には例の一番乗りの女の子からのものもあり、これがまた、短いながらも感動を覚え
させるような文章で綴られており、こんな時間をこの子と過ごせたことを記憶に留めておきたい思い、この
ブログに書きました。


以下、お手紙の全文を下に写します。

中○みゆう
『○○プロ。お元気ですか。私はあの右のスキーがはまらなかった中嶋です。リフトに一番初めに乗った中
○です。スキーははじめてでリフトはとてもきもちよかったです。(私は高い所が好きなので)
○○プロのおかげで、さいごらへんはころばなかったです。ころんでこその努力なんです!いたくなかった
し、転ぶのもたのしいかぎりです。みんなにリフトにのったことでうらまれたのですが、ぼちぼちです。自
主線(?)もけっこうすすんでました。雪にうもれたりしたけどカーブもすぅーいスイです。本当にありが
とうございます。来年もまた来るので、また指導していただきたいです。お父さんのいない私には父のよう
なそんざいでした。来年もよろしくです』・・・イラスト付き


お元気ですか、・・・と先ずご機嫌伺い。
私はあの右のスキーがはまらなかった中○です。リフトに一番初めに乗った中○です。・・・と、一生懸命
に自分を思い出させようとしています。こんな書き方をしている子はめずらしいのです。
そして、私のようなじいちゃんでも帽子とサングラス付ければ壮年に見えたりしてしまうのかしらと、
ちょっと気恥ずかしいところもあるのですが、とにかく、この子にとって、幸せに思うひと時を作ってあげ
ることが出来たとするならば、嬉しいことと思うのです。

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