ゆらぎ

中島みゆきさんの「地上の星」と言えば、2005年12月に放送が終了したNHKの人気番組「プロジェ
クトX挑戦者たち」の主題歌として扱われていた名曲なので、多くの人々に馴染まれていたと思う。
2002年の第53回紅白歌合戦では黒部ダム発電所の地下道から生中継されたのが記憶に新しいが、これ
が中島みゆきさんの紅白初出場だったらしい。
そして今、 You Tube にアップロード(2010.9.21)されたものが、一千五十万回以上アクセスカウンター
が動いているが、これはもう放送当時より更に多くの人々の間で、中島みゆきさんの何となく物憂い歌い方
と少し焦燥の漂うその声がガチガチにイメージ化されて貼りついているに違いない。

だから、このイメージをベストとして自分の観念を固定させる人がいるとしても、それはそれで自然の成り
行きだと思えるし、一般的にヒット曲となった場合のオリジナル歌手に対するイメージは相当に強烈なもの
があると思うから通常はオリジナルがベストとなる筈。
だから、他の歌い手が普通にカバーしてしまえば声がどうであれ、聴く方はオリジナルと比べて排他的評価
になってしまうだろうという事は容易に理解できる。

とは言え、同じ歌を耳新しい歌唱法や声で聴かされると、時にハッとなって耳をそばだてる事になる。その
好い例がアルバム『Singer』の中で島津亜矢さんが唄う「地上の星」だ。ここでの、亜矢さん、曲中間から
見事な濁声を使って、見つからない美しいものを求めて、雄々しく雄渾に唄い切っているのである。
同じ歌でも、解釈を変え、歌唱法を変え、声が変ると如何に違った歌になるかの好例だと思う。だから、自
分の場合はこんな唄い方をされる亜矢さんに驚異を感じるし、亜矢さんが唄うこの歌に凄く魅了されるので
ある。そして、編曲はお馴染みの貫田重夫さんでこれは歌詞カードを見て初めて気がついた。編曲は歌の衣
と言われるけれど、やはりの感がする。

亜矢さんがテレビで唄われた動画が2本Webで聴く事ができるがここでの歌い方はストレートな唄い方を
されていて、CDとは別の唄い方だ。従って、この濁声の入る「地上の星」はCDでしか聴く事ができない
ものだ。

疑問として残るのはこの濁声を使う歌唱方は何というのか、ずっと以前から解けない紐を解きたい思いに駆
られていたが、未だに解らない。
ただ、一般的に使われる濁声、ダミ声はデスヴォイスもしくはデスボイス、或いはグロウルと呼ばれるらし
いが、Webで聞かれるものは、いわゆる「ダミ声」「がなり声」であり、悪声だと思えるものが多いから
亜矢さんの濁声はこれらの範疇には入らない。
ただ、ヒントとなるものは最近、再放送で見たNHKプレミアム『和あるど 和の音』の中での歌舞伎界の
効果音で黒御簾の中で演奏されるものだが、太鼓面に左手のバチを添わせて置きながら右手のバチで鼓面を
叩くと置かれたバチが振動で少し浮き上がり共鳴するので音が二重に聴こえる。これで、自然の中で循環す
る音、大きな波の音や、雨の音、川の流れなどを奏法を変えながら表現していくのだという。

もう一つは、アイヌの伝承楽器でムックリ(口琴)と呼ばれるもので、竹を工作したものを口に挟み端に付
けた糸(紐)をしゃくり息と合せて音を出すものだが、やはり複雑な濁音が出る。これも自然界の音を出す
ものだという。これらの音は、いずれも自然界で感じる音に根差すもので、決して不快な音にはならない。

それにしても、亜矢さんの濁声は複雑な喉の使い方をされているのだろうと思われるが、これをいとも簡単
に?唄いこなしてしまう力量に感嘆してしまう。まあ、世の中にはヨーデルがあったり(特にウィリー沖山
さんのヨーデルは超絶)、ホーミーがあったりするし、まだまだ歌世界は広いのだろう。

ところで、先の『和あるど 和の音』では、能管による「ひしぎ」、三味線の「さわり」、篳篥(ひちりき
)による「ゆらぎ」を取り上げて放送されたが、日本人の音に対する感受性がとても豊かであることが解っ
て、とても新鮮な気持ちになった。

なかでも「ゆらぎ」は、F分の1のゆらぎという言葉から知っていて、その「ゆらぎ」があれば人の気持ち
を心地よくさせるということまでは知っていたが、しかし、その実態が何であるかまでは知らなかった。
その道の先生によると、ゆらぎとは、ものの予測のできない空間的、時間的変化や動きが、部分的に不規則
な様子をいうのだそうな。これだけでは、ちょっと解りにくい。Fはフリケンシー(周波数)であることは
この度知ったが、知らぬはアンタばかりだと言われても、知らないものは知らないのだから仕方ない。

わかり易かったのは『和あるど 和の音』の中での説明。
例えば篳篥(ひちりき)は隣り合う音高の違う音符の間を無限の音を出しながら移動できるのだという。
すなわち、西洋音楽ではオクターブ間の音は12音で表現されるが、実は隣り合う音の間にも無限の音が存
在する訳で、例えばオーボエではその無限の音は表現できないのだという。
篳篥(ひちりき)でいう、無限の音とは規則性のない音で、これが「ゆらぎ」なのだという。
通常の音楽ではなめらかに演奏する記号として、隣り合う音、或いは複数の音に対してスラーを指定するが
、ここで言う「ゆらぎ」とは同義語とはならない。

ここでまた、思い出すのは何の歌によらず亜矢さんの歌唱だ。特に顕著に感じるのはフレーズ間の声の滑ら
かな移動で、時に強弱を伴って切れ目なく移動していく声は気持ち酔わせてとても心地よくさせる。
亜矢さんはテレビなどでは著名な歌い手さんとのコラボも多くあり、持ち歌を交換して唄われることも多い
が、その歌唱によるインパクトは相方歌い手さんの歌唱方法まで、変えさせる力があるのだと実感する時が
ある。あの時はこうだったのに、今は・・と感じられることがあるが、これは自分の思いであってお名前ま
で挙げることは遠慮する。

ともあれ、亜矢さんの唄には「ゆらぎ」があるのだと、勝手に思わせてもらっている。






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    亜矢姫の唄は芸術だと固く信じているおじんです。
    コンサートなどに参加したい気持ちはやまやまなれど、不如意のことが多いので、これは条件が整い次第となっています。

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